日蓮宗における葬儀での読経は、常に木魚を叩き、その合間にお鈴を鳴らすなど、どちらかというとテンポのよいお経です。また、いくつかの種類のお経があげられますが、その中に出てくる文言には、宗祖である日蓮大聖人の名前を始め、功徳や衆生といった、一般の人でも意味の分かる言葉が点在していることから、何を伝えようとしているのかが何となくわかるという特徴があります。
テンポのいいお経であることから眠気を誘われるといったことがなく、親族及び参列者の焼香もスムーズに進んでいくところが、日蓮宗の読経によって行われる葬儀の、一番大きな特徴と言ってもよいかと思われます。参列する場合に数珠は必需品ですが、たいていの人は一連の手首にかけられる程度の大きさの数珠を持っている人が大半です。
その中にあって、日蓮宗の正式な数珠は、長めの物を二連にして手にかけ、梵天と呼ばれる丸い形をした房が付いているのが特徴です。この特徴を知っていると、この宗派の信徒であることが一目瞭然であるのは、異端の宗教とも呼ばれた経緯のある側としては、あえて自ら違いが分かるように目指したものなのかもしれません。
日蓮大聖人を敬いつつ、亡くなられた方は旅をし、最終的にはお釈迦様の元へ行くというのが、その教えの根底にあります。また、初七日から始まる七日毎の法要を経て、四十九日の満中陰忌を迎えると、旅は終わり、お釈迦様の元へたどり着き、再び生まれ変わるという教えは、大切な家族を失った遺族の心を慰めてくれます。